ビッグ・バンドで辿るジャズの歴史(戦中戦後編:1945〜2017)

【講師】 柴田 浩一さん
横濱JAZZプロムナード、プロデューサー。
現在、NHK横浜放送局(81.9MHz)にて、毎週水曜日のジャズ番組「FMサウンド☆クルーズ/よこはま発JAZZクルージング」を担当。2011年、NHK関東甲信越地域放送文化賞を受賞。 著書「デューク・エリントン」(愛育社)。

講座の中からいくつか切り取ってご紹介します。

リンク先のYoutubeアドレスは、2017/10〜12時点で参考情報のひとつとして掲載しました。

掲載がいつ取り消されるかは全く予測出来ないので悪しからず。(若)

第1回:「新時代:ハーマンとケントン」2017/10/21

M1: Artistry RhythmStan Kenton & His Orchestra (1943)

「ハリウッド映画スタジオ出身、今までの音楽とは違った進歩的なジャズを目指しました。

歴代のボーカリストには、アニタ・オディ、ジューン・クリスティ、クリス・コナー等が名を連ねています。もっと評価されるべきオーケストラ。」

 

YouTubeから実際の演奏風景です。

https://www.youtube.com/watch?v=RgKNqjVE43Q

 

M4: Apple HoneyWoody Herman & His Orchestra (First Herd) (1944)

Woody Herman、デビュー時は甘ったるかったのが、大分モダンになっています。」

https://www.youtube.com/watch?v=c5mNJf9lzH8

 

M5:Sentimental Journey/ Les Brown & His Orchestra(1944)

「ドリス・デイはこの曲でスターになりました。2人にとって最高に幸運な曲。」

https://www.youtube.com/watch?v=O7umIJj8UBo

 

M8:JATP Blues/Jazz At The Philharmonic(JATP)(1946)

「JATPとは、人種・年令を問わず、腕のいい人を集めて見せるジャズバンド。

ノーマン・グランツが立ち上げて、70年代迄40年近く続きました。

https://www.youtube.com/watch?v=EvYOtM1PN0s

 

M11:Strardust /Lionel Hampton & His Just Jazz All Stars(1947)

 

Lionel Hampton のジャズ史上に残る名演がこれ。名演ベスト3に入るか。」

 

https://www.youtube.com/watch?v=2lQFbhpOCB4

 

M12:Four Brothers/Woody Herman & His Orchestra(1947)

 

「1期Woody Hermanはビ・バップでしたが、2期Woody Hermanではクールジャズがコンセプトとなっています。見事な編曲の名演奏がこれ。」

 

https://www.youtube.com/watch?v=hK_9otl3sZ0

 

M17:Mood Indigo/Duke Ellington & His Orchestra(1950)

 

「1948年にLPレコードが開発され、ジャズ界で最初に活用したのがEllington。

自分の曲をリニューアルし30分に編集。無駄のないハーモニーが素晴らしい曲です。」

 

https://www.youtube.com/watch?v=GohBkHaHap8

 

M18:Hollywood Freeway /Gerald Wilson & His Orchestra(1950)

 

Gerald Wilsonは、バンドリーダーとして60年位活躍。

ぶれない正統派のジャズバンドです。」

 

https://www.youtube.com/watch?v=RakiBUvsl1A

 

 

第2回 「LP時代のモダン化(1950〜1960)」 2017/11/02

M1:Dance One/ Chico O’ Farrill & His Orchestra(1952)

「戦後の落ち着いた雰囲気の中、ガレスピーがまいた明るいラテン音楽の種が発展します。この曲は、ラテンよりもJAZZに近い感じか。」

 M4: Algerian Fantasy/ Gerald Wilson Orchestra(1954)

「作曲・編曲が得意なGerald Wilsonは、黒人ながらも西海岸で活躍しました。この曲ではフルートがソロをとっています。」

https://www.youtube.com/watch?v=u60tC7h7pYg

 M5: St. James Infirmary/ Perez Prado & His Orchestra with Shorty Rogers & His Orchestra(1954)

 JAZZ古典をマンボ風にアレンジした曲です。この曲ではラテンが主。」

https://www.youtube.com/watch?v=VoczjIW64P4

 

M6: Diminuendo in Blue and Crescend in Blue/ Duke Ellington & His Orchestra(1956) 

 

BigBand史上に残る名演奏。この時期、Ellington楽団はBasie楽団に抜かれていましたが、NewPortにおけるこの熱演で再びTOPの座に立ちます。

ポール・ゴンザルベスのSaxが、何と27コーラスのソロをとっています。」

 

時期・場所は別ですが、実際の演奏風景が分る画像はこちら。必見です!

https://www.youtube.com/watch?v=ZbjzfZSmQMM

 

 

M7: Shiny Stockings/ Count Basie & His Orchestra(1956)

「再結成したBasie楽団がスウェーデンのエーテボリで録音した曲ですが、ジャケットではロンドンの文字が表示されています。ドラムスに聞き応えがあります。」

https://www.youtube.com/watch?v=Y-OUARO13Wo

 M9: Miles Ahead/Miles Davis & Gil Evans Orchestra(1957)

「マイルスのTpを壮大なスケールに置いた感じの曲。シンフォニー的な構成となっています。」

https://www.youtube.com/watch?v=NG9wHUXcih4

 M12: Coasting with J. C.J. C. Heard Octet(1958)

 「この時期にしては大変モダンな演奏です。日本在住の時期もあり、日本ジャズ界へは大きく貢献しています。」

 

M15: Mark of Jazz, The/ Maynard Ferguson & His Orchestra(1959)

 「白人バンドながら黒人ドラマーで存在感を出しています。Tpの短いフレーズに特徴があります。ロッキーのテーマ曲が有名。」

 

M16: Two Years of Torture/Quincy Jones’ Orchestra with Ray Charles(1959)

 ゴスペルで有名ですが、どちらかといえばJAZZ寄りの人です。」

 

第3回 「エリントン・ミュージックの完成(1960〜1970)」 2017/11/18

「エリントンは、約50年間に約3000曲を作曲しました。

20世紀最大の音楽家の一人として、どんな音楽人生を形成したかを追ってみましょう。」

 

M2M3  Ko-Ko

1940年の初盤と、1956年の再吹き込み版の聴き比べ。

「仏の評論家アンドレオデールが、「この再演は原曲を汚すものである」との論争あり。それ以降この曲は演奏されていません。」

 

M4 Come Sunday
with Maheiria Jackson (1958)

「組曲の中から、黒人の地位向上を願った曲。黒人がまだ教会に入れなかった頃、中の様子を覗き込む姿が唄われています。」

https://www.youtube.com/watch?v=x0PlS8nuceA

 

M5The Single Petal of a Rose(1959)

「英国女王の組曲から、女王に捧げたきれいなピアノ曲。

複製が許されず、ジャズファンはエリントンの死後、やっとこの曲を聴くことが出来ました。」

 

https://www.youtube.com/watch?v=QOA_BazyGPA

 

M8Black and Tan Fantasy(1966)

1920年代の名曲、これが60年代に入るとどう変わったか。

イントロのピアノは怖い感じ。

60年代はポートレートも、黒人差別に対する怒りやピアニストとしての自己アピールで、厳しい表情のものに変わってきます。」

 

https://www.youtube.com/watch?v=ZeVhopvxBuQ

 

M10: Latin American Sunshine(1968)

 「楽団としてはパワーが弱る中、69歳で作曲した最高傑作。

イントロはリズムのみ、オーケストラが入ると明るくメロディーも変わって、より大胆に。

ソロよりもアンサンブル重視の構成となっています。」

https://www.youtube.com/watch?v=XFzJ4lhtuIk

 

M12: Tang(1971)

 「アフリカ〜ユーラシアをテーマにしたアルバムから。

古くからの楽団メンバーが減少、ギリギリの状態で録音した傑作。最後の煽るパートは、エリントンの残された人生を象徴しているかの様です。」

https://www.youtube.com/watch?v=rDNrzrW112c

 

 

柴田氏によるまとめ

「エリントンは60歳を過ぎて、自分の人生を完結させます。

断片的なものをひとつにまとめようとして、クラシックに接近したり。もう一度原点に戻ろうとして、そこで再び作曲したり。やはり人生は、60歳から!」

 

 

第4回 「ギル・エヴァンスの遺産(1970〜)」 2017/12/01

M: Don’t Git Sassy / Thad Jones, Mel Lewis & "The Jazz Orchestra"(1967)

「通称サド&メル・バンド。超一流のメンバーを揃えています。」

https://www.youtube.com/watch?v=jjAt9AfHQrE

 M: Jelly Rolls / Gil Evans & the Gil Evans Orchestra (1981)

Jelly Roll Motonをテーマにした曲。ロック・ビートにして演奏していますが、ジャズの本質はブルースであることを理解した演奏です。」

https://www.youtube.com/watch?v=lSdKkckUdLs

 M: Squatty Roo / The Clayton-Hamilton Jazz Orchestra(2011)

 サド&メルの後に白人トップのバンドが数多く現れました。このバンドは結構長く続きましたが、音と指揮はサド&メルにそっくりです。」

 

ドイツでのライブ映像 https://www.youtube.com/watch?v=BjYTauAerkw

 

M6: Harlem Air Shaft / Lincoln Center Jazz Orchestra(1998) 

マルサリスが率いるバンド、偉大な先人の曲をトリビュートしています。

優等生過ぎて人気が今ひとつの感あり。」

 

M7: Awful Coffee/ Carla Bley & her remarkable Big Band(2006)

「女性ピアニストCarla Bleyが率いるバンドで、相当高く評価されています。Gil Evansの影響あり。」

曲は異なりますが、演奏風景 https://www.youtube.com/watch?v=gcmaLb-zlWI

 

 

M: September / Gordon Goodwin’s Big Phat Band(2008)

「吹奏楽をやる中学生に大人気のバンドです。バディ・リッチとこのバンドの人気が高い。」

https://www.youtube.com/watch?v=Xu6_ihrcido

M10: The Big Time / The Vanguard Jazz Orchestra(2014)

 Village Vanguardでの月曜日枠、サド&メルの後を継いだのがこのバンド。1966年にスタート、少しGil Evansぽい感じもします。

 

実際のライブ風景の画像です。https://www.youtube.com/watch?v=lbHS1m1v6V8

 M11: Song with Orange / Mingus Big Band(2010)

Mingusの曲しかやらないバンド。これは、いいです。」

Tokyo年越しライブでの大熱演の映像、これは必見です!

https://www.youtube.com/watch?v=BJhh-HdEZhY

 M12: Used ‘Ta Could Christian McBride Big Band (2017)

 2017年9月発表のアルバムから。まさに今のジャズビッグバンド。 ベーシーが出て来た頃のカンサスの雰囲気が漂う。JAZZが好きで演奏している気持ちが、この曲から伝わって来ます。」

 

曲は異なりますが、最近のライブ風景の映像です。

https://www.youtube.com/watch?v=PsrJCrJPoT0

 

以上